風本真吾の健康談話

園児・学童期に、背の伸びをロスするのは

グラフは子供の背が伸びるプロセスを示しています。A:安定伸長期、B:よく伸びる2年、C:止まりゆく3年です。

低身長の子供の治療を行うときは、まずはどの時期であるかを分析します。そして、その時期に応じた治療を展開します。治療といっても、医薬品を使うことがメインにならず、生活指導や栄養素(サプリメント)で解決を図ることもしばしばです。
子供の身長の問題に関しては、子育て前に両親への「子供の体格づくり」に関する教育活動、小学校教諭への教育活動が大切であると私は主張しています。

今回は、Aの時期、つまり、4歳から第二次性徴期が始まる頃までに背の伸びをロスしているのは、どのような原因が潜んでいるかを語ります。

Aの時期:安定伸長期(4歳から第二次性徴期が始まる頃まで)

この時期は、普通にきっちりと食べている子供なら、通常は年間5~6cm伸びます。1ケ月で4~5mmです。食べる量が少ない場合は、年間の伸びが5cm以下、つまり1ケ月4mm以下になります。

「しっかりと食べているはずなのに伸びが悪い」という場合は、食べる量以外に、何かの原因があると思わなければいけません。この時期に背の伸びをロスする原因は以下のようなものです(成長ホルモン分泌不全などの病気の場合を除く)。

いじめにあっている

学校でいじめにあっていても、子供は、先生や親にアピールしないことがしばしばです。健気なことに、誰にも語らずじっと耐えているのです。しかし、身体は正直で、背の伸びが1ケ月で2mmくらいにまで低下します。
診察室で、子供に「学校で、いつもケンカする相手や、つらい仕打ちをしてくる相手はいませんか」と静かに尋ねると、子供は涙を浮かべながら語り始めます。それを隣で聞いて、「全然、気づかなかった」「全然、話してくれなかった」と親は驚きます。子供は、診察室では、語ってくれるのです。

健康保険の小児科では、背の伸びの悪い子供を見た時に、成長曲線を出して、ホルモン検査に持ち込むべきかどうかを考えます。子供のいじめ問題を聴取しようとしないことに私は怒りを感じています。

激しい運動をした後に、十分に食べずに寝てしまう

「どんな運動をしたら背が伸びますか」という質問をよく受けます。答えは、「運動の種類により背の伸びが影響することはありません」です。ただし、運動の激しさのレベルとその後の摂食量のことは重要です。
激しく運動した後に、「お腹がすいた」といってたくさん食べるなら大丈夫です。しかし、運動後に疲れて食欲がなくなり、「食べずに寝てしまう」という子供がいます。この場合、背の伸びは大きくロスします。それが重大問題であることに親は気づいていません。消費エネルギーの大きい運動といえば、何といっても水泳です。

水泳で、激しく練習した後に、食べずに寝てしまう子供には注意してください。サッカーや野球でも、「練習後に、疲れてあまり食べなくなる」という現象には、親は過敏にならなければいけません。

両親が不和で心を痛めている

背が伸びてきたプロセスを分析すると、年間5~6cm伸びなければいけないこの時期に、2cmくらいしか伸びていない年度が、1~2年があったという子供がいます。
その時期のことを聞いてみると、両親の離婚問題が関係していた、ということがしばしばです。 両親の不和は、子供心への影響が大きいのでしょう。Aの時期は、中学受験のストレスくらいでは、背の伸びに影響することはめったにないのですが、両親の不和、広く言えば自己の周辺の人間関係には、大きな影響を受けるようです。

クラスの中に性格の合わない生徒がいる。あるいは担任の先生と合わない。

ある1年だけ伸びが悪い、しかし、クラス替えと同時に背の伸びが回復する、という現象をしばしば見かけます。人間関係に過敏な反応を示す子供がいるのです。性格的に合わない知人が、同じ部屋の中にいた時に強い心理的なストレスを発し、それが体格の成長に関するホルモン、あるいは、自律神経に影響するのです。

学校においては、9月の身長測定で、4月以後の5カ月の伸びが、2cm以下の場合は、個別面談してあげるのがいいように思います。話を聞いてあげるだけで解決になることも多いのです。

副腎皮質ホルモン剤を使っている

アトピー性皮膚炎や腎臓病で、小児ながら副腎皮質ホルモン剤を使うことがあります。この場合、背の伸びは大きくロスします。しかし、治療上の必要性でやむを得ない理由で副腎皮質ホルモン剤を使っていますので、薬をやめなさいとは言えないケースがほとんどです。この場合、成長ホルモンの舌下投与剤が奏功します。

重い荷物をもって移動している

「学校のカバンが重かったから、背の伸びが悪くなった」と主張する母親がいます。確かに、伸びが悪いことに関して、重いカバン以外に理由が見いだせないケースがあります。背が伸びる現象は、重力に逆らう現象ですから、身体を地面に押さえつけるものは、身長を伸ばす妨げとして、理屈的にも成立します。

剣道をしていた子供で、重い防具以外の理由を見いだせずに、伸びが悪かったということがありますから、やはり、重い荷物は悪影響になるように思います。

アレルギーで食事制限があった

「アレルギーで牛乳や卵がダメだった」ことにより、幼少期の身長をロスしていた子供がたくさんいます。一部のメインになる食材が制限されるときは、他の食材でカバーすることを、十分以上に意識しなければいけません。

夜更かし

不登校などで、昼夜逆転生活をしていた時期を送ったという子供を何人か診ましたが、その時期の背の伸びは確実に悪くなっています。就寝時間が影響するのは間違いありません。体内時計による成長ホルモンの分泌活性時間は、夜の22時から翌2時です。

しかし、「受験期の一時期、寝るのが遅くなった」という子供を大勢分析しましたが、その時期に、「食べる量も減っていた」(=体重があまり増えない)を併せ持った子供だけ伸びが悪いようでした。しっかりと食べていれば、受験期の多少の夜更かしは、恐れる必要はないように思います。

以上、主な原因を8つあげました。他にもマイナーな原因がありますが、Aの時期に1年で5cm以上伸びていないときは、「必ず原因がある」ということをよく知っていてほしいと思います。

なお、子供の体格づくりをもっと勉強したい人は、「身長発育指導士」の教科書で学んでください。

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